社葬を行う範囲や基準については、特に法律では定められていません。 しかし、企業経費として行うものなので、税務上の制約が存在します。 それを踏まえた上での社内規定を作っておくとよいでしょう。
社葬取り扱い規定の必要性
社葬に掛かる費用は、税務上一部を除いて経費として計上することができます(図表2)。そのために必要なのが、取締役会で社葬を行う旨を決定した議事録です。この議事録がない限り、領収書があっても経費と認められない場合があるので注意しましょう。
そこで、社葬対象者の訃報が入ったら、まず取締役会を開催し、会社の意思として社葬を執り行うことを決定する必要があります。取締役会では、その故人に対してどのレベルの社葬を行うか、費用はどれくらい出すのか、葬儀委員長や葬儀実行委員長をどう選ぶか、その責務は何かといったことから、供花や香典についての扱いなど、社葬にかかわることすべてを取り決めなくてはなりません。しかし、慌しい中、それを一つ一つ決定して文章化するのは大変な作業です。
それを解決するのが「社葬取り扱い規定」(図4参照)。これは、企業の諸規定として常備が定められているものではありませんが、取締役会規定などがある場合、その内規として規定化しておくことをおすすめします。こういった社葬の基準を前もって作成しておけば、取締役会では、それにそって認証する形を取ればいいので、短時間にすみやかに会議を進めることができ、議事録もシンプルな内容で済みます(図表3)。そのため、社葬取り扱い規定は、いかなる状況にも対応できるよう、さまざまなケースを想定して綿密に練り上げておくことが重要です。
また、社会の流れや状況によって、従来想定していなかったことが起こることもあるので、年に一度は見直しを行うようにするとよいでしょう。
社葬の範囲と費用の基準
社葬取り扱い規定を作成する上で、もっとも重要になるのが、社葬の範囲と費用の基準です。図表4の第四条と第五条がそれにあたります。
ここでは、ごく一般的な例を挙げましたが、企業によっては第四条の執行範囲を役員、職制レベルで細分化することも必要でしょう。基本的には「会社に多大な貢献をした人」ということが基準になりますが、具体的には、会社のオーナー、現役の役員が対象になります。また、現役社員の場合も、その貢献度により社葬の対象者にする場合があります。
●葬儀委員長、葬儀委員について
社葬の範囲と費用の基準を定めたら、次に社葬委員長、社葬委員の決定方法とその責務について明記しておきます。
葬儀委員長は、社葬執行にかかわる一切の最高責任者であり、社葬当日、式次第の中心的存在となります。個人葬の場合の喪主にあたる役割ですから、故人と親交が深く、地位的にも高い人を選出します。
通常、社員の葬儀の場合は、社長が選ばれます。現職の社長の葬儀の場合は、順当なら会長、あるいは副社長や専務など後任の社長となる人を選ぶことが多いようです。状況によっては、公的立場(加盟組合連合会等の会長、国会議員、市長)、他社の社長、取引先銀行の代表、故人と親交の厚かった知人などから選ぶこともあります。社外の人に葬儀委員長を依頼するときは、故人との親交の深さ、社会的地位、年齢、参列者との兼ね合い、そのほかのバランスを熟慮し決定することが大切です。複数の候補が上がった場合は、葬儀副委員長というポジションを設けてお願いするケースが多いようです。
葬儀委員は、葬儀委員長を補佐して、社葬遂行に務めるのが責務です。したがって、葬儀委員は役員全員が勤めるのが一般的。状況によっては、故人の友人に勤めてもらう場合もあります。
●葬儀実行委員長葬儀委員について
葬儀実行委員長は、その名の通り葬儀を「実行」するのが職務。そのため、経営トップの補佐として日頃から従事している総務部長を専任するケースがほとんどです。葬儀実行委員長に選任されたら、まずは葬儀実行委員長を選任し、葬儀実行本部(総務部でもよい)を設けます。以降全ての情報をこの部署で管理します。
社葬実行本部は、不側の事態に即応し、多岐に渡る細かい用件一つひとつに対し、適切に判断して正確に処理することが求められます。そこで、重要なのが役割分担。あらかじめ社葬を運営する組織図を作っておくと良いでしょう(図5参照)。
●各担当の職務を理解し、その適任者を選択する
図表5の組織は、正式には社葬が執り行うことが決まり、社葬実行本部が設けられてから発足します。しかし、葬儀実行委員長、葬儀実行委員としては、各々の役割を理解し、その職務に合った適格者、あるいは適任部署を想定しておくと良いでしょう。
- ○文書担当/社葬の案内状や社葬広報、会葬の礼状などの作成を行います。制作会社、印刷会社とのつきあいのある広報や宣伝部、社内報を作成している総務の担当者を選択するとよいでしょう。
- ○渉外担当/喪家や、寺院(神社、協会)、式場、招待先などへの交渉や連絡を行います。大切な業務なので、渉外に慣れている総務部のベテラン社員が適任でしょう
- ○記録担当/社葬に関するすべてを記録します。写真や映像、音声を撮る場合は、そうした機材の操作に慣れている人を選びましょう。葬儀社に依頼できる場合もあります
- ○会計担当/社葬に掛かる費用すべてを扱います。香典の管理、支払い、その後の税務処理までかかわるので経理部の人材を配するとよいでしょう
- ○連絡担当/式を滞りなく行うには、密な連絡が不可欠。想定外の事態にも対応するには、早くから社葬の全体像を掴むことのできる葬儀実行委員会(総務部)のメンバーが良いでしょう
- ○報道担当/社葬の案内を新聞に掲載したり、社葬の現場を報道が押し掛けた場合の対応を行います。広告代理店やPR会社との付き合いのある広報や宣伝部署が適任かと思います
- ○遺族担当/社葬の事前打ち合わせのほか、密葬を含む個人葬のお手伝い、社葬当日の会場案内や接待を行います。故人の部下や担当秘書など、以前から喪家とお付き合いのあった人材の中から選びましょう
- ○僧侶(神官など)担当/渉外担当のサポートとして僧侶(神官など)の窓口にあたり、式当日の会場案内や接待を行います。秘書、あるいは営業など接待に慣れている人材が適任。
- ○設営担当/会場の設営等を行います。お別れ会などで故人を偲ぶ飾り付けを行う際などは、それ相当のセンスを要します
- ○式場担当/参列者の席順決めや式場の運営管理を行います。特に席順決めは後々問題になりがちなので、各部署と綿密に連絡を取って決めることが大切です。
- ○案内担当/最寄り駅から会場までの案内を行います。駅から遠い場合、最寄り駅が複数ある場合など、適所に人を配する気遣いが大切です。
- ○配膳(設定含む)担当/お茶や食事の用意し、配膳を行います。参列者の人数を鑑みて、過不足のない人数を配置しましょう。
- ○司会担当/式当日の司会進行を行います。司会に慣れた人がいない場合は、葬儀社に依頼することもできます
- ○進行担当/社葬全体の進行管理を行います。これも早くから全体像を把握している社葬実行本部のメンバーが良いでしょう
- ○供花・供物担当/供花や供物がどこから届いたかを記録するとともに、その順列を管理します。責任者には、社外のお付き合いを把握している人を据えるようにしましょう
- ○式場内外案内担当/入口あるいは控え室から式場、座席への誘導などを行います
- ○受付担当/式当日の受付や芳名帳の作成などを行います。関係者別に受付を設置するなど、大勢の参列者が一度に殺到してもお待たせしない配慮が必要です。
- ○携帯品担当/手荷物などを預かります。番号札を用意するなど、受け渡し時に混乱しないよう心掛けましょう
- ○車両担当・配車担当/車両担当は、車でいらっしゃる方に対して、駐車場の設営や誘導などを行います。配車担当はハイヤーやタクシーの手配を行います
- ○礼状担当/会葬者に対して、また供花、供物、香典、弔電などに対し、お礼状を作成します。礼状の日付は式当日にし、翌日には発送できるよう準備を整えておく必要があります。
- ○救護担当/暑い季節や高齢者が多い場合などは要注意。参列者が多い場合は、医師を派遣してもらう手立てを取るのも手です。
ポイント
- 社葬の費用を税務処理する場合は、取締役会の議事録が必要
- 社葬取り扱い規定を設けておくことで、取締役会がスムーズに進行し、取りこぼしのない準備が行える
- 葬儀実行委員長は総務部長が選任されるケースが多い。したがって、葬儀実行本部も総務部が主体となるのが望ましい
- 葬儀委員長ほか、各担当者まで、適材適所の配慮が必要

